1974 in Vienna and Hamburg, studied by Rudolf Hausner and Ernst Fuchs.(-’78)
1993 ‘Art Works by Tsunemasa Takahashi’ published by Tokuma-shoten
info@takahashitsunemasa.com
高橋常政
KFSアート・コンテストで大賞受賞後、ウィーン幻想派絵画に衝撃を受け、渡欧。オーストリア、ドイツと絵画修行の後帰国。イラストレーターとして第一線で活躍しながら、画家としても作品を発表する高橋常政。テンペラなどの古典技法に習熟し、新たな技法の開発にも取り組む作家が、自らの絵づくりのノウハウを存分に語ります。
1949年東京生まれ。創形美術学校に入学、ヨーロッパの古典技法に触れる。KFSを受講し、‘72年KFSアート・コンテスト大賞受賞。ウィーン幻想派絵画を学ぶため渡欧、E.フックスに師事、さらにドイツ・ハンブルクでR.ハウズナーに学ぶ。帰国後、イラストレーターとして活躍する一方、画家としても個展を中心に作品を発表。
(図-3)は洋梨を三個並べて描いただけのものです。台所の棚の上に置いておいて数日間そのままにしてありました。寝る前に部屋の明かりを消したときガス台の手元灯だけがついていて、その弱い光の中にこの洋梨がありました。
何かの美しさを感じてカメラで撮っておきました。そのまま長いあいだデジカメのメモリの中に入れたままでした。メモリの整理をしたときに見つけて、影のでき方が美しいと思って描き
始めました。前掲の二つの絵とは違って、素直にそのまま描写をして短い時間で完成しました。ただなぜかわからないのですが、この絵は大きいのです。20号あります。実際の洋梨の大
きさの5倍ぐらいに描いている。おそらくは洋梨のぽってりした大きさを感じていたのではと思います。
一次的イメージを描く時は、先ず感じる、そしてそれを意識化する、そして育てるように描く、イメージが元の単なる写生で終わらないように
描きながら育っていくイメージを生かすような方法です。この方法は僕には有効ですが読者の判断はいかがでしょうか。
しかし僕の絵の方法はこのあとふれる二次的イメージでの制作の場合が多い。きっちりと分けられるわけではありませんが、でもだんだんに一次的イメージの方法が増えつつあります。
こういうふうに僕の「二次的イメージ」とは模倣や影響、パクリとすれすれの境界にあるようなものです。現代の都会に住んでいれば毎日ものすごい量の映像的イメージが自分の周りを通り過ぎていきます。僕らはそれらから逃れることは難しい。むしろ十二分に楽しんで消費している。山奥の電気もないところで育って絵が好き、でも印象派もルネッサンスも若冲も見たことがないというような生活ではありません。アルタミラの壁画から現代美術まで僕たちは映像イメージから創作へ高橋常政の絵づくりレッスン特集として“経験”してしまっているので、なんらかの影響を受け続けています。長い年月人間たちが築き上げてきたイメージが織物の縦糸と横糸が織りなすように影響しあってさまざまな作品を生み出してきたのです。その時々にまったく新しく見える革新があってまた違うイメージを生み出していく。しかしまったく新しい物が生まれるためには古いものの充実が必要です。しばらくするとその古いものが急に新鮮に見えてくる、昭和のものを若い人たちが興味を持つ現象があります。僕らの世代がどんどん捨て去ってきたデザインをなんだかいいと取り上げる若い世代の人たち。そして若い人たちがそこからまた新しいデザインを生み出している。ほんとうにおもしろいと思います。