Takahashi Tsunemesa Office

Painter, Illustrator

1974 in Vienna and Hamburg, studied by Rudolf Hausner and Ernst Fuchs.(-’78)
1993 ‘Art Works by Tsunemasa Takahashi’ published by Tokuma-shoten

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色鉛筆とパステルの併用技法2

色鉛筆とパステルの併用技法

この浮世絵は豊原国周(とよはらくにちか)幕末から明治にかけて役者絵などで活躍した浮世絵師です。ぼくにとっては理想のような絵の形を持っています。平面性と装飾性と色の鮮明さ。色彩のバルールの小気味よさ。構図のかっこよさ。しかし何故かまだ日本ではそれほど有名ではない。でも不思議な事に「知られざる浮世絵の巨匠」というタイトルでオランダで大きな画集がでています。神田の浮世絵専門店などでまだ比較的安い値段でも購入できます(2万円以下の時もある!)とにかく絵がシャープでくっきりしているので見入ってしまう。

今回はこの浮世絵師へのオマージュです。早い話が同じように描いてみたい!ということです。だってこの絵、なんかすごいカッコいいでしょ!!パクリになると大変にまずいので絵の中に国周の名前をいれて模写であると表明しておきます。著作権云々は問題ないですが明らかな影響を受けた時はきちんとその点を明確にしておきましょう。僕の場合は絵の中に「倣国周」などと描きます。

こちらが下絵。服の模様にアールデコみたいな要素を描こう!。ああおもしろそうー! 早く描きたい。下絵の目の部分に注目。顔の輪郭から目がはみ出ている。目の中の瞳が目からはみでている。こういう描き方は役者の浮世絵の中に見つけられます。浮世絵には面白い誇張表現があります。相撲取りの足の指が6本あったり。度を超したふざけた物とか当時のいろいろな禁制をものともしない、なにかゲリラ的な表現もある。国芳に壁に描かれたヘタクソないたず
ら描きの役者の絵をじっと見ているいなせな男のような絵の空間をひん曲げてしまう表現もあります。これは現代文学の自己言及的表現とでも言えそう。マグリットを江戸に連れてくれば描いたかもしれないですね。TI CON ZERO はたいした意味ではありません、物が移動するときに付ける数式の記号のようなもの。僕の絵によくあらわれるつぶやきのようなものです。イタリアの小説家のイタロカルビーノの短編のタイトルです。なんだか解らないイメージになんだか解らない名前を着けておく。するとそこに自分だけの一群のイメージファイルができます。なんでもかんでも気になるイメージは TI CON ZERO としておく。この方法はおすすめするけど、まあ無理にとは。

いつものように下絵の引き写し。

下絵の線が手でこすれて消えて行くので右下側からどんどん各位置にパステルで色をこすりこんでいきます。これもひとつのコツですね。フィキィサチーフはかけない、消す事が出来ないので。

隣り合わせの色が多少重なり合っていても気にしなくて大丈夫。むしろ響き合うのでいいことになる。小さな部分は綿棒などで。どうしても気になる部分は練りゴムで形を整えます。

そして重要!白い色は「紙の白さ」をそのまま使います。まげの根元の白い部分は薄い水色をパステルでつけて、あとは練り消しゴムを細く尖らして白い絵の具で描くように消しています。レイヤー技法の白の絵の具の使い方を思い出して。

背景に散らばる白い小さな四角や三角の部分もタイプ用の字消しのステンシルや自分でトレペを切ってステンシルを作って練りゴムで消しています。

ここまできたらあとはがしがし色鉛筆で描き込んで行くだけです。ここでもうひとつのコツ。これは大事です。
図のように色鉛筆を持つ時はある角度を一定の状態にキープして描きます。先が減ってきてこういう形の状態で描くとムラがでにくくなります。

このとき電話だとか鍋で煮ている何かが焦げてきたとか、色鉛筆をはなさないといけないとき。軸の文字でその握っていた位置、角度を覚えておきましょう。大きな面を描く時は同じ色を何本も先にとがらせておいてどんどん取り替えて行きます。5本くらい並べてた時もあります。画面に密度をあたえるためです。鉛筆を軽く横にもってさらさらと描くような感じではこういうマチエールはでてこないので注意。手首も爪も痛んでくるけどなんだそのくらい!という覚悟でしっかり描きます。

完成。
部分的に「鉛筆」で影を描いています。鉛筆はHBから2Hくらいがいいです。初めの方で鉛筆を使うと色が濁って色鉛筆は滑るのでだめです。最後に鉛筆で締める感じです。
白い小さな雪のようなものはカッターナイフでそっと削ります。初めにぬったジェッソのおかげで削りやすい。あとは水彩絵の具を初めに散らしたり。水を霧吹きで吹きかけたりする。そのあとのパステルが面白い効果をだすなど細かい工夫は実験してみて下さい。技法なんてシンプルな芯をつかめばあとは自分の方法を見いだす事が楽しみになるから。