Takahashi Tsunemesa Office

Painter, Illustrator

1974 in Vienna and Hamburg, studied by Rudolf Hausner and Ernst Fuchs.(-’78)
1993 ‘Art Works by Tsunemasa Takahashi’ published by Tokuma-shoten

Email

info@takahashitsunemasa.com

色鉛筆と水性クレヨンの併用技法

色鉛筆と水性クレヨンの併用技法

今回は水性のクレヨンと色鉛筆を併用する描き方です。
この画材と方法を使い始めたのは、かなり昔「へたうま」という妙なジャンルのイラストが流行しはじめたときでした。いまでもいうのかな。

ちょうどいい機会なので、いわゆる「へたうま」についても書いてみます。若い人たちには耳慣れない言葉かもしれない。「下手なのに面白い絵」というくらいの意味です。そういう絵の人たちが面白い仕事をしていますね。漫画でもイラストでも。

シンプルに技法だけの記事にすればとも思いますが、この方法は難しい描き方でもないし、むしろなぜこの材料を使い始めたのか、そっちの話のほうが面白そうなので画像と一緒に読んでみてください。
このクレヨンの使い方はメーカーのカランダッシュのホームページがきれいで詳しいからそっちを見てください。(|カランダッシュ|トップページの商品カタログpdf)これは手抜きのようですがそのとおりです!いやそうもいかないので自分なりに描きますが。

使うクレヨンはカランダッシュの水性クレヨン「ネオカラー2」大きな画材店で売っています。いま気づいたけどどうも子供用でもあるらしい、、、む。
むかし(25年以上前)ある人が知り合いの子供にあげるのでと使いかけを持っていました。ちょっと使わせてもらったら色の良さと描きやすさが気に入って、すぐに買いに行きました。製品の色の設計がさすがおフランスと思ったらスイス製でした。色設計とは商品全体を貫く色の独自性みたいなものだと思ってください。エーグルの回し者ではないけど店全体を見た時、色がいいなと思う。絵の具製品にもある。ロンドンに行くと街全体に特有の色使いがある。そんな感じです。

「へたうまと」はあるコピーライターが伝説の雑誌「ビックリハウス」で言い始めたのではないかと思います。僕もこの雑誌にずいぶん描きました。パロディ雑誌で投稿が主な面白い雑誌でした。
その中で絵について、無茶な分け方をしていた。一番は「うまうま」これは簡単に達成できない。次が「へたうま」下手な絵なのになんかいい、魅力がある。「うまへた」これは絵はうまいのに魅力がない。こういう絵は確かにありますね。そして「へたへた」これは今度ね、がんばってね。

この言い方、見事に「絵の出来具合」について言い表しているようです。下手な絵だけど魅力のある絵というのは例を挙げるまでもなく素朴派というジャンルがありますが、ルソー達の絵はへたうまという言い方ではとても片付けられない。ピカソがアカデミックに描く力を持ちながらああいう表現をしている、「うまうま」の極地です。ピカソはルソーをからかう目的を持ってパーティまで主催しながら彼の絵を購入して何点もコレクションしていたといいます。ぼくも買うならならピカソの最高の傑作よりもルソーの最高の傑作を貯金して買いたい!

この雑誌を媒体としてヘタウマ絵が定着すると、あっ言う間にイラストの業界にそのタッチが増えてきました。へただっておもしろきゃいいんだ!というベクトルの絵が蔓延してきた。ファインアートのほうでもニューペインティングというジャンルがでてきた。その前にエアブラシリアルイラストとファインアートのスーパーリアルに描く流行があったのでその反動みたいな感じでした。いままでの主流のリアルイラストは追いやられ、へただけど、なんかおもしろいなっ!という絵が世の中にあふれて誰でもイラストレータになれるみたいなかんじでした。そして時が経ち今では大きな流行もなくみんながそれなりの位置で併存している感じです。

そのヘタウマ「黎明期」に僕もおっちょこちょいモードで描いてみたのがこれです。
若かったからーという言い訳はしません。今は年寄りの冷や水モード状態だから、同じようなものですが。水墨画というより、墨で描く絵に毎日、毎日挑戦しています。伝統的な水墨画に打ちのめされながら、なんか今までのとは違う「墨の絵」を描いてみたいのです。この辺の絵はモノクロで描く技法のところで後ほど記事にしてみます。

この絵なんの媒体に描いたのか覚えてませんがたぶんCDのジャケットのライナーだったかも。ちなみに僕が描いた数枚のCDのバンドはみんな解散してるみたいです。たぶん僕のせいではないと思うけど、、、みんながんばってくれー。じつはこの絵は「左手」で描きました。わざと「下手」になるように、、。この思い上がった心の動き、実に恥ずかしい。絵がうまい訳ではないのに!!いやらしい!調子に乗ってる。ヘタウマに見えるようにいままでのレイヤー技法や色鉛筆の技法とはちがう「クレヨン」で、描いたのです。

この手のイラストを調子に乗ってあちこち描き散らしました。この頃の作品はみんな袋にいれてガムテープで塞いで門外不出として、しまっちゃった。その時期はさらにヘタウマのように見えるマチスの切り絵のようなこともしました。マチスの切り絵はマチスの最晩年の仕事です。しかしやってみるとあまりの難しさに恐怖を感じました。フォルムの美しさや色のバランス、とてもまねできません。マチスの長い間の苦闘の果てにたどり着いた「境地」みたいなものだからです。老境にあって足腰が弱り、アシスタントの手を借りながら制作したのです。
試しに「マチスの切り絵」と画像グーグルして見ると本物のマチス画像のあいだに沢山の真似作品がみえます。簡単に真似できるからです。でもそれらはすぐにわかる。デザイナーの中にもマチスの切り絵を真似をしてる人もいる。でもマチスの「前」にはああいう切り絵はなかったのです。マチスが始めたマチスだけのものです。色指定でもなければ印刷された色紙を切っているのでもない。手で塗った大きな紙をはさみでばさばさと「デッサン」したものなのです。 ポンピドー美術館でみた巨大なマチスの切り絵にはほんとに腰を抜かしそうでした。
いいかげんこれで気づきます。このマチスの「聖ドミニクス」のデッサンをヘタウマだと思って真似して描いてみてください。簡単でしょ?そのあと同じ感じで自分のイメージを自分でいくつか描いてみるとよくわかります。自分はただのへたなんだと。
そして自分にはこのヘタウマの方向は向いてない、やってると何か見失いそ うだと思いました。へたなのはいやだ、ほんとにうまくなりたい。でもそうやってがんばってきましたが、この年になってほんとに先は遠いと思うようになった。絵は広くて大きい。その広大な地平線が見えてきてやることが途方もなく広がってる感じです。poor boy long way for home というブルースがあったけど。
この水性クレヨンは恥ずかしい僕の黒歴史(大げさ!)の試行錯誤のときの画材でしたが。気を取り直せば使いやすい素晴らしい画材なのはたしかです。子供向けらしいのがちょとなんですが。そして考えた方向はわざと「下手に描く」のではなくてもっと「表現的に描き殴る」方法でした。いままでキチキチと描き込んでいた方向とは別の描き方をずっと求めていたからです。油性のパステルやクレヨンも試しましが、色鉛筆や水彩の併用がしにくい。この水性クレヨンならがしがし描いて水を含ませた筆でこすると面白いマチエールができる。色鉛筆も上に乗る!

ほかの画材も併用してるけど、そのときに描いた絵がこれです。(画像:クレーの肖像)
これはイラストとしてではなくて自分の作品としてでした。表現的に描くときアクションを強くします。一発で決めるより「腕を大きく動かして手数を少なく」描く。いま描いた線、色をじっと見つめる。激しく描くときはかえってゆっくり手が動くのです。そして、この方がはるかに基礎的なデッサン力が必要とわかりました。一筆ずつを頭の中のコントロール中枢と話し合ってるような感じですね、今の動きでいいのかー?それ描き過ぎだとか、これでいけ!とか。落ち着けあわてるな!とかその程度の対話ですが。一筆のあいだに「連続判断」をしていく感じですね。この意識は「書」と同じに思えます。この数年ぼくは書に夢中なので、このことに気づいたときしばらくぼーっとしてしまいました。一筆一筆描くときに画面全体に注意することは大切です、イチローのバットコントロール!描くときに必要なのは右脳を充分働かせて衝動や感情を。そして左脳で批判、うまく行ったらその方法の分析。絵の技法に名前をつけるなんてのもその左脳の働きです。

書の先生の言葉「望遠と接写を同時にやるといい」なるほど。言い換えてみると目の中心で細部を見て「同時」に目の周りで全体を見る。描いてるその部分に集中して「同時」に絵全体のバランスを見る。よけい解りにくくなっちゃったか。

このクレーの絵のあとなにかつかんだ気がしたのでどんどん仕事としても同じように描いていきました。

画材で表現が広がることが必ずある。読者もいろいろ画材を試してください。その画材が好きになれること、画材が話しかけてくるようなことがあったらそれがチャンス。
最後にとってつけたようにこのクレヨンの僕の基本的な使い方をしてみますが正直なところこれだけ。

1、クレヨンの上を、かすかに湿らせた筆でこするようにのばす方法。

クレヨンは濡れるとかなり伸びますから、かすらせるように軽く塗るのがこつ。もちろんほかの色同士をクレヨンで描いて湿った筆でこすって混色することもあります。とにかく筆の水分はしっかり拭うくらいにしてから使うのがこつ。

2、その上に色鉛筆などで書き込むことも、線が走るように表現的に描くことも自由です。

濃い鉛筆なんかもよく乗ります。もちろん不透明水彩なんかもいいですが下の色を溶かすのでよく注意して。

次回はもうすこしへただのうまいだのについても書いてみたいと思います。
一つの宿題としてこの書をみて、この書はへたなんだろうかうまいんだろうかと考えてみてください。

今日初めて読者の反応を編集部からいただきました、みなさんありがとう!励みになります。